日本土人形資料館は、全国2,000点の土人形を収蔵している資料館
長野県中野市にある日本土人形資料館は、素焼きした粘土に着色して作る「土人形」専門の資料館です。
中野市で製作されている中野土人形をはじめ、全国各地の土人形が約2,000点展示されています。
…
( ゚Д゚)(土人形?)
と思った方、僕と一緒です。
そもそも、ここに来るまで土人形という単語すら知りませんでした。
ただ、僕はライターという職業柄、知らないことはちゃんと知りたいです。
というわけで、Google Mapで偶然見つけて興味を持った、日本土人形資料館に行ってきました!その時の様子を紹介・レビューします。
土人形って何?という疑問についてもできる限りわかりやすく解説しているので、みなさんもこの記事をきっかけに、楽しい土人形の世界に触れてみませんか?

なお、日本土人形資料館は全館撮影可能で、館内にも「撮影は自由です」と書かれています。ぜひスマホやカメラを持っていきましょう!
日本土人形資料館の基本情報・アクセス
住所 | 〒383-0013 長野県中野市中野1150 |
電話番号 | 0269-26-0730 |
営業時間 | 3月~11月:9:00~17:00 12月~2月:10:00~16:00 |
休館日 | 毎週木曜日 12月29日~1月3日 |
入館料 | 一般300円 |
人形の絵付け体験料金 | 400~3,300円(人形による) |
駐車場 | あり |
所要時間 | 30分~120分 |
日本土人形資料館は、中野市の信州中野駅や市街地のある場所から、東山公園のある山のほうに上がっていくと見えてきます。
道がそこそこわかりにくいので、ナビや地図を確認しながら向かってください。
見て回るのにかかる所要時間は、30分から1時間程度。人形の絵付け体験(別料金)を行う場合は、2時間以上見ておいたほうが良いと思います。
日本土人形資料館を楽しむための注意点
- 事前に土人形について知識を入れておくとより楽しめる
特に注意するべき点はありませんが、できれば事前にある程度土人形について調べてから日本土人形資料館に行きましょう。
というのも、知識がないと館内の土人形を見ても「ぜんぶ同じにしか見えない」という現象が発生します。
土人形は、地域や作者ごとに個性・特徴があります。個性や違いを知ったうえで行かないと、「ふ~ん」「へ~」で終わってしまうんです。(筆者体験談)
何を言っているかわからないかもしれませんが、ここは騙されたと思って、とりあえず言われた通りに事前に勉強してから行ってみてください。
別に、深く学ぶ必要はありません。ネットやAIでちょこちょこっと調べるだけでもいいですし、なんならこの記事読むだけでもいいです。

土人形について調べ、興味を持ってから行くと、より日本土人形資料館を楽しめると思います。
そもそも土人形とは?どうやって作るの?
さて、そんなわけでまずは土人形について簡単に解説します。
土人形は、そのまんま「粘土で作られた人形」です。
- 型に粘土を詰める
- 型から粘土を外して天日で乾かす
- 低火力の窯で素焼きにする
- 胡粉(ごふん)で下塗り
- 泥絵の具で着色
ちなみに胡粉とは、主に貝殻から作られる白い粉末で、人形や日本画の下地に使ったり、白い絵の具としてそのまま使われていました。
かなり省略しましたが、土人形の作り方を簡単に紹介するとこんな感じです。
あくまでも個人的な意見ですが、土人形は「土偶に着色したもの」と考えていいんじゃないかな、と。
※参考写真:さらしなの里 歴史資料館
土偶も粘土を焼いたものなので、作り方はほぼ一緒です。なので、当たらずとも遠からずだと思います。
土偶も人形も、古くから縁起物や信仰の対象として作られていたものです。生命を育む女性を表した土偶は、豊穣や出産を祈願するための呪術・祭祀の道具でした。
一方で土人形は、古代の日本人が大地への畏怖を込めてその土地の土を使い、厄除けの人形を作ったのが原点です。
そして江戸時代から明治時代にかけて、日本全国ではさまざまな土人形が作られました。中でも京都の伏見人形は土人形の原点と言われています。
中野市では、いまも「奈良家の中野人形」と、「西原家の立ヶ花人形」の2つの土人形が受け継がれ製作されています。

出典:信州なかの産業・観光公社(www.nakanokanko.jp)
奈良家の中野人形は、土人形の原点である京都伏見の流れを汲む土人形で、縁起物や習わしを中心とした作品が多いそうです。
つまり、正統派で伝統的な「これぞ土人形!」といった作風なんだと思います。

出典:信州なかの産業・観光公社(www.nakanokanko.jp)
一方で、西原家の立ヶ花人形は、愛知三河の流れを汲む土人形で、歌舞伎や実在の人物を題材とした人形を中心に制作しています。
歌舞伎人形の型を提供していた経緯から、大型で色鮮やかな人形も多いです。
伝統的な奈良家の中野人形に対し、立ヶ花人形は華やかで前衛的というか、革新的な土人形だと考えられます。

個人的な解釈です。違ったらごめんなさい。
中野市は、京都伏見の流れを汲む奈良家の中野人形と、愛知の流れを汲む西原家の立ヶ花人形、経緯も特色も違う2つの土人形が同一地域内で作られています。
これは全国でも大変珍しい、というより類を見ないそうです。そのため中野市は、「土人形の里」と呼ばれています。

さて、難しい話は終わりです。これからのんびりと土人形を見学に行きましょう
日本土人形資料館を見学
日本土人形資料館入口です。
入り口付近の売店では、実際に土人形が購入できます。
さすが日本土人形資料館。
いずれの人形も精巧で美しく、一目で名工の作品とわかるものばかりです。
…
( ゚Д゚)(ドラエ…?)
訂正、一部いろいろな意味でアウトっぽい品もあります。

出典:信州なかの産業・観光公社(www.nakanokanko.jp)
なお、日本土人形資料館では気に入った素焼きの人形に色付けして、オリジナルの土人形を作る土人形絵付け体験もできます。
時間のある方は、ぜひ世界に一つしかないオリジナルの土人形を作ってみてください。
毎年9月頃には、土人形絵付けコンテストも開催されています。
上記の作品は、絵付けコンテスト小学生低学年以下の部最優秀賞作品です。
めちゃくちゃ可愛い素敵な色付けですね。
第一展示室:土人形常設展示
第一展示室は、「奈良家中野人形」「西原家立ヶ花人形」が展示されています。
この展示室で、事前に勉強してきたことが活きてきます。
知識がないままこの部屋に入ると、全部同じ人形にしか見えません。
逆に言えば、少し知識を学んでから来ると、細かな人形の違いが分かってより楽しめます。
真田幸村モチーフの土人形。個人的に結構好きな作品です。
さらっと紹介しましたが、これだけ細かい造形の土人形を作るのって、実はかなり大変なんじゃないでしょうか。
三国志の関羽雲長。
関羽は、没後に神格化され、武門や学問、商売の神様として信仰されています。
横浜中華街の関帝廟にある関聖帝君像は有名ですよね。
鯛と犬の狆(ちん)を組み合わせた土人形。
狆は、江戸時代に大奥や富裕層の間で人気のあった愛玩犬で、郷土玩具にはよくモチーフとして用いられていたそうです。
第二展示室:土人形常設展示
第一展示室の奥にある第二展示室も、引き続き「奈良家中野人形」と「西原家立ヶ花人形」を展示しています。
館内の利用案内と実際の展示内容が多少違っていたので、時期によって展示内容を変えていそうです。
第一展示室は庶民的で可愛らしい土人形が多かったのですが、第二展示室は少し本格的というか、芸術性の高い土人形が多いです。
要は、高そうな人形が多いです。
また、商売繁盛の招き猫など、モチーフも明確な感じがします。
招き猫可愛い( *´艸`)
歌舞伎モチーフを得意とする、西原家立ヶ花人形の名作「政岡(まさおか)」。
政岡は、歌舞伎の有名なお家騒動演目「伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)」に登場する人物です。
自分の息子を犠牲にしてでも、仕えている主人の若君を守り抜いた乳母で、女形(おんながた)の中でも最も大きな役の一つとして数えられています。
ちょっと怖いというか不気味な感じですが、商売繁盛、開運招福の人形と言えばこの福助ですよね。
( ゚Д゚)(目が…焦点の合わない目が怖いのよ…)
この福助のモデルですが、江戸時代に評判の良かった奉公人だったとか、ある商家で福を呼ぶキャラクターとして生み出されたなど諸説あります。
土人形は、縁起物や伝統的な作品だけではなく、ほっこりするような動物系や風刺系の人形もたくさん作られています。
かわいい。
クオリティは全然違いますが、子どもが粘土で作った作品みたいな雰囲気です。
第三展示室:全国の土人形を展示
館内奥にある、第三展示室へ向かう廊下にもたくさん土人形が飾られています。
全国各地の土鈴(どれい)。
土鈴とは、土人形と同じように粘土で作った鈴で、土人形同様魔除けや縁起物として作られました。
「猫饅頭喰い(ねこまんじゅうくい)」です。
猫饅頭喰い人形は、土人形の元祖・京都伏見の代表的な題材で、「父と母、どっちが大事?」と聞かれた子どもが饅頭を割り、「どっちがおいしいと思う?」と返した逸話が元になっています。
この話から、子どものいる家庭に猫饅頭喰い人形を飾ると頭のいい子に育つそうです。
一休さん的なアレ。
「酔っ払いおとうさん」。
もし子どもが粘土でこの作品作ってたら、悲しくて泣いちゃうかもしれない…。
第三展示室には、全国各地の土人形が展示されています。
地域ごとに分けられてショーケースに入っているので、違いや特徴が分かりやすいと思います。
東北の土人形は、赤を中心とした鮮やかな着色の人形が多いです。
九州の土人形は、赤、青、黄などの原色を多用した、明るい印象の人形が多いです。
また、他の地域以上に愉快でユーモラスな表情をした人形や、可愛らしいデザインの人形が多数見られました。
ほかにもたくさんの土人形があります。
第三展示室は、この資料館でもっとも賑やかな展示室です。
一番奥には、「三次人形(みよしにんぎょう)」の「花魁」「扇持ち娘」、「津屋崎人形(つやさきにんぎょう)」の「女」の3体が展示されています。
三次人形は独特のツヤを持ち、別名「光人形」と呼ばれているそうです。
津屋崎人形は、素朴な素焼きの人形ですが、顔料・水・ニカワで調合したもので着色するため、鮮やかで力強い色を放っています。
土人形の元祖、京都伏見人形もありました。
なんというか…確かに元祖っぽいというか、非常に素朴ですね。
こちたは、特に説明もない謎の人形ですが、かわいいですね。

和風シル〇ニアファミリーかな?
第四展示室:全国各地の土鈴(どれい)を展示
第四展示室には、全国各地の土鈴が展示されています。先ほども解説しましたが、土鈴は土人形同様、粘土で作った鈴です。
昭和には土鈴ブームが起き、多くの収集家が土鈴を買ったり作ったり、そして手に入れた土鈴を交換しあって楽しんでいたそうです。
今で言う、カプセルトイや、ポケモンカード・遊戯王みたいなもんでしょうか。
僕の年代で言うと、キン消しとビックリマンシールですね。
…と思ったんですが、どちらかというと昭和の頃に旅行先で誰もが買っていたペナントや提灯が近いのかも?

何のことかわからない人は、お父さんやお母さん、もしくはおじいちゃんやおばあちゃんに聞いてみよう!
難しく考えず、小さな土人形みたいなものだと思えばOKです。実際、手に取って鳴らさない限り土人形との違いは分かりません。
土人形同様、さまざまなモチーフで作られています。
干支と絵馬モチーフ…だと思います。
伏見人形がこんなところにも。
昔、農業の神様である伏見稲荷の土鈴を割って畑に撒くと、豊作になるという信仰があったそうです。
…
( ゚Д゚)(…どなた?)
最後の最後で大きな謎が残りました。
というわけで、今回は長野県中野市にある日本土人形資料館を紹介しました。かわいらしく、鮮やかで美しい土人形がたくさん見られる場所です。
また、小高い山の上にあって景色も美しく、静かでゆっくりできる場所でもあります。休日、中野市に遊びに行ったら、ぜひ日本土人形資料館も訪れてみてください。
このサイトでは、日本土人形資料館のほかにもさまざまな専門的な博物館、資料館を紹介しています。
予定のない休日は、ふらっと博物館・資料館に出かけて知らない世界や分野を学んでみませんか?
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