長野県の郷土料理を語る上で、「おやき」は避けて通れません。
おやきと言えば、信州そばと並ぶ長野県2大郷土料理と言っても過言ではないでしょう。
ただ、実際におやきがどういう材料で、どうやって作られているかまでは詳しく知らない方も多いと思います。
僕も今回調べて初めて知りましたが、実はおやきって本当に奥が深いというか、お店や作り人によってまったく違う食感や味になる料理です。
今回、そんな不思議な郷土料理おやきの特徴や材料、自宅での作り方について調査しました。
記事の最後には、僕が実際に行って食べたおすすめのおやき店も紹介しています。
おやきに興味のある方、おやきが好きな方はぜひ読んでください。
おやきとは、小麦や米粉生地に具材を入れて焼いた長野県の郷土料理
おやきは長野県を代表する郷土料理で、小麦・雑穀・そば粉・米粉を水で溶いて練った生地に、調理した野沢菜やナスなどの具材を包んで焼いた料理です。
特にきっちりと決まった作り方はなく、「なんかの粉で生地を作って、適当に家にある具材を入れて焼いたらおやき」くらいのゆるさ。
なんなら焼かずに蒸したって、揚げたっておやきです。
そんなおやきですが、昔は貴重な保存食として作られていました。
( ゚Д゚)(この作り方でどうやって日持ちさせるのかしら…?)
と一瞬疑問に思いましたが、調べてもわからなかったので詳しい方教えてください。
長野県でおやきが生まれた理由には諸説ありますが、「長野県は稲作に不向きで、米よりも雑穀や小麦の方が一般的だったためおやきが生まれた説」が有力です。
そんな長野県が、現在日本有数の米どころになるとは…品種改良すごい
おやきに入っている具材の一例
おやきに入っている具材はお店や家によってさまざまで、無数のバリエーションがあります。
おそらくですが、本来は
( ゚Д゚)「家にあるもん、適当になんでもぶち込んじまえヒャッハーッ!」
みたいな料理だったはず。
そのため、「おやきにはこれを入れるべき」「こう作らないとおやきじゃない」みたいなルールはありません。
ただ、いわゆる「定番」の具材となると、ある程度決まっています。
以下が、どのお店でも大体扱っている定番具材です。
- 野沢菜
- かぼちゃ
- ナス
- 切り干し大根
- あんこ
- 野菜ミックス
- さつまいも
上記以外に、各お店・家庭オリジナルの具材を使ったおやきがあります。
また、「菜の花」「栗」「根曲がり竹」など、特定の時期にしか取れない旬の素材を使用した季節限定のおやきや、そのお店でしか食べられない具材もあるので、いろいろ探してみるのもおやきの楽しみ方の一つです。
もちろん具材だけじゃなく、使っている粉や調理方法もさまざま。お店や家が違うと、ほぼ別の料理と言ってもいいくらい味や食感が違います。
伝統的な「灰焼きおやき」はもう食べられない?
- 焼く
- 蒸す
- 焼いて蒸す
- 揚げて蒸す
- 揚げて焼く
現代では、お店や家庭によっておやきの調理方法は上記のようにさまざまです。
ですが、おやき本来の伝統的な調理方法は、鉄鍋で表面を焼いたあと、囲炉裏の灰の中に入れて蒸し焼きにする「灰焼きおやき(別名:灰ころがし)」です。
ところがこの灰焼きおやき、現在お店で買うのは非常に難しくなってしまいました。
というのも、近年(と言ってもけっこう前ですが)保健所から「灰の中にぶち込んで焼いたおやきは食品衛生上、安全が保証できないから禁止!」的なお達しがあったそうです。
そのため、新規出店するおやき屋さんはこの灰焼きおやきを作れません。
また、昔は灰焼きおやきを作って売っていたお店も現在では鉄鍋で焼いたり、囲炉裏に網を置きその上で焼く方式に変えている所も多いそうです。
自宅で灰焼きおやきを作るのは自己責任の範囲で自由ですが、そもそも家に囲炉裏がある家庭もほとんどないでしょう。
上記の理由により、現在灰焼きおやきを食べるのは簡単ではありません。
ただ、ごく一部「郷土料理の保存」の名目で、灰焼きおやきの製造や販売許可が出ているお店もあります。
2025年1月現在、僕が知る範囲では、灰焼きおやきを販売している店舗は以下の3店です。
- 信州むしくらの湯 やきもち家(長野市中条地区)
- いくさかの郷 かあさん家(生坂村)
- かついえおやき店(生坂村)
他にもありましたら「ご依頼・お見積もり・その他お問い合わせ」から情報を頂けると嬉しいです。
おやきはどこで買える?食べられる?
おやきは、長野県内北信から南信までの全域で購入可能です。
おやき専門店に行くのが一番おすすめですが、お土産屋さんや道の駅、一部のコンビニでも買えるので、探せば意外とどこでも手に入ります。(おいしいかどうかは別の話)
ただ、おやきはもともと「上水内郡西山地域」、現在の飯綱町や信濃町、小川村が発祥です。
そのため、北信地域の方がお店や専門店が多い気がします。
ただ、中信や南信地域でもおやきは売っていますし、名店もたくさんあります。
例えば生坂村(ぎりぎり中信地区)のおやきは有名です
自宅で作る簡単なおやきの作り方
おやきは、自宅でも簡単に作れます。
自宅でおやきを作るレシピを紹介します。
おやきの材料
- 生地用の粉(小麦粉・米粉・そば粉など)
- 熱湯もしくはぬるま湯もしくは水
- 中に入れる具材(なんでもいい)
さきほど説明した通り、おやきは「なんかの粉で生地作って、適当に家にある具材を入れて焼いたものがおやき」なので、必要な材料も超ゆるいです。
ざっくり言えば「粉と水と具材ならなんでもいい」。
ただ、一応セオリー通りに作るのであれば、多くの方がおやきの生地に使う「中力粉」を使用しましょう。
中力粉で作ると、ふんわりもっちりとしたおやきができるそうです。
生地の食感を変えたい方は、強力粉と薄力粉を自分好みにブレンドしてもOK。
小麦粉 国産 柄木田製粉 おやきミックス 長野県産小麦粉100% 1.0kg×2個 2.0kg 価格:2280円 |
もっと簡単に作りたい方は、上記の「おやきミックス」というおやき専用の粉を使ってみてください。
おやきミックスを使えば、ホットケーキミックス感覚で誰でも簡単においしいおやきの生地が作れます
おやきの作り方
- 生地用の粉をボウルに入れる
- 少しずつ水を入れて滑らかになるまでよく捏ねる
- 30分ほど生地を寝かせる
- その間に具材の用意する
- 生地を分割し、10cm程度になるよう伸ばす
- 生地の中央に具を置き、丸める
- 口をしっかり閉じながら形を整える
- フライパンに少量油をひく
- こんがり焼き目が付くまで弱火でじっくり焼く
- 最後に少量水を入れるか蒸し器で蒸し焼きに
上記はあくまでも一般的な手順です。
特に焼き方は自由で、焼いてから蒸す人が多いようですが、蒸してから焼いたってかまいません。
フライパンやホットプレートで焼くだけでもいいし、逆に蒸すだけでもOK。
具材は、調理の手間がいらないあんこや、お惣菜の切り干し大根を買ってくると簡単です。
もっとおいしく作りたい方は、なすの味噌炒めなどを作るといいでしょう。
作り方が自由すぎて説明しづらい…大まかな手順さえ守ればルールはありません。楽しく、好きなように作ってください。
実際に食べたお店のおやきを紹介
最後に、僕が実際に行って食べたおいしいおやきのお店を紹介します。
長野県生坂村 「いくさかの郷 かあさん家」
長野市から車で40分ほどの場所にある、生坂村の道の駅「かあさん家」では、今も伝統的な「灰焼きおやき(灰ころがし)」が売っています。
灰焼きおやきは、表面がしっかり焼かれているので生地がサクサクと香ばしく、とてもおいしいおやきです。
日によって具材は替わりますが、僕のおすすめは「なす」です。
甘い味噌で炒めたなすと、固くて香ばしい生地との相性は抜群。
ただし、かあさん家の灰焼きおやきは、ガッチガチの硬い生地にソフトボール大の巨大サイズと、ほぼ凶器です。
子どもや年配の方だと、文字通り歯が立ちません。
割って食べようとすると、「ミシミシッ…」「メリメリ…」っと音がするほどの硬いです。
かあさん家のおやきを買いにいく場合、覚悟していきましょう。
さんざん言っておいてなんですが…もちろん味は絶品です。
いまでは珍しくなった灰焼きおやきを食べたい方は、ぜひ生坂村まで足を運んでみてください。
住所 | 〒399-7201 長野県東筑摩郡生坂村5049-1 |
電話番号 | 0263-69-2712 |
営業時間 | 9:00~17:00 食堂は11:00~14:00 |
定休日 | 月曜日 月曜日祝日の場合は翌日 |
駐車場 | あり |
長野県小川村「小川の庄 縄文おやき村」
長野県北信地域にある小川村の「小川の庄 縄文おやき村」では、昔ながらの囲炉裏で焼く香ばしいおやきが食べられます。
灰焼きおやきではありませんが、囲炉裏に置いた鉄の焙烙(ほうろく)を使って表面を焼き、その後火の入った囲炉裏の灰の上でじっくりと焼きます。
灰焼きおやきほど生地がガチガチに固くならず、さっくりとした程よい歯ごたえと香ばしさ、そして中の生地のもちもち感が楽しめます。
具材は野沢菜やあずきがメインで、そのほか季節限定の具材もあります。
味は良い意味で現代っぽい濃い目の味付けで、「素朴すぎるおやきは苦手」という方にもおすすめです。
なお、小川の庄 縄文おやき村は、「小川村本店」「MIDORI長野店(長野駅)」「大門店(善光寺表参道)」の3店舗があります。
小川村にある雰囲気の良い本店がおすすめですが、小川村の本店は正直な話とんでもない場所(お店の方ごめんなさい!)にあるので、冬は十分注意してください。
地元の人間でも、冬に小川村の本店に行くのはちょっと怖いです。
『またまた~記事用に大げさに書いて…』とか思った人は、ぜひグーグルマップで確かめてみてください。
手軽に小川の庄 縄文おやき村のおやきを食べたい方や、冬に食べたい方は長野市内のお店に行きましょう。
小川の庄 縄文おやき村がある表参道については、以下の記事でも紹介しています。
関連記事:個性的な店が立ち並ぶ門前町!長野県 長野市 善光寺表参道を紹介
住所 | 〒381-3302 長野県上水内郡小川村高府6937 |
電話番号 | 026-269-3767 |
営業時間 | 9:00~17:00 ※季節によって変動あり |
定休日 | 月曜日および年末年始 |
駐車場 | あり |
長野県長野市 OYAKI FARM(おやきファーム)
長野市の長野IC近くにある「おやきファーム」は、おやきの名店「いろは堂」が運営しているたくさんの種類のおやきが楽しめるおやきカフェです。
おやきを買って帰ることもできますし、景色の美しい2階のテラス席でのんびりおやきを食べることもできます。
また、おやきを製造している工場の見学やおやき作り体験も可能なので、家族の休日のお出かけやデートにもおすすめ。
売っているおやきは、「野菜ミックス」「野沢菜」「切り干し大根」「粒あん」といった定番メニューのほか、季節限定具材もあります。
おやきだけではなく、おやきの生地を使った「オヤキジドーナツ」もおすすめ。
この日は、定番の野菜ミックスとオヤキジドーナツを注文しました。
おやきファームのおやきは、揚げて焼く「揚げ焼き」です。揚げて焼いたおやきは、もちもちふっくらとした食感。
皮はやや甘めで、具材の野菜ミックス自体も甘いので、甘めのおやきが好きな方におすすめです。
ただ、個人的にはかなり甘く感じたので、素朴な味が好きな人はほかの味のほうがいいかもしれません。
オヤキジドーナツはおやきと同じ生地を使っているのでやや甘めですが、具材がないので素朴な甘さがそのまま楽しめます。
甘いのが好みの方は、付属のメープルシロップを付けてみてください。まるではちみつトーストのような、大人も子どももおいしく食べられる味になります。
おやきファームのおやきは全体的に甘めで食べやすいので、「おやきってあんまり好きじゃないんだよなあ…」という方もぜひ一度試してみてください。
おやきファームをもっと詳しく知りたい方は、以前取材した際の様子を書いた以下の記事もぜひ読んでみてください。
関連記事:長野市 おやきファームは、気軽におやきを楽しめる工場&カフェ
住所 | 〒388-8019 長野県長野市篠ノ井杵淵7-1 |
電話番号 | 026-214-0410 |
営業時間 | 9:30〜18:00(冬季は17:00迄) 工場見学は10:00~16:00 |
定休日 | 不定休 工場は火曜日休み |
駐車場 | あり |
長野県の郷土料理おやきのまとめ
今回は、長野県の有名な郷土料理おやきについて解説しました。
正直、僕は子供の頃からおやきが苦手でいままで敬遠していたんですが、大人になっていろいろなおやきを食べ比べてみた結果、中には非常においしいおやきもあることを知りました。
おやきの作り方や味付けは店によって大きく違う…というより、お店が変わるとほぼ別の料理と言っても過言ではありません。
1つ2つおやきを食べたくらいで「おやきって好きじゃないなあ…」と言ってしまうのはもったいないです!
おやきが好きな方もそうでない方も、ぜひいろいろなお店を巡ってみてください。
このサイトでは、長野県の観光情報や郷土料理に関する情報を多数紹介しています。もっと長野県の珍しい郷土料理について知りたいという方は、以下の記事もぜひ読んでみてください。