長野県と言えば、「軽井沢」「善光寺」「上高地」「おやき」「りんご」…そして古くから郷土料理として親しまれてきた「信州そば」!
みなさんご存じの通り、長野県は日本有数のそば処ですが、長野県に住んでいるとなかなかそばを食べません。
身近にあるからこそ、その希少性や価値に気が付かないものです。
というわけで、今回は信州そばの魅力や良さを再発見するため、信州そばについて調査してきました。
信州そばのおいしさの秘密やそばの旬、そして最後には僕が実際に食べに行ったおすすめのそば屋さんを紹介します。
県外の方も県内の方も、この記事を読んでおいしい信州のそばを食べに行きませんか?
信州そばとは?
信州そば(蕎麦)は、長野県で作られているそばの総称です。
長野県はそばの栽培に適した条件が揃っているため、古くは江戸時代から良質なそばの名産地として知られていました。
江戸時代、信州から運ばれるそばは「霧下蕎麦(きりしたそば)」と呼ばれ、江戸で大人気のそばブランドだったほどです。
信州そばと言っても、茹でてそばつゆで食べる以外にも地域によってさまざまな食べ方があります。
- そばの甘皮ごと挽き、ぼっち盛りにした戸隠の「戸隠そば」
- 大根の絞り汁+焼き味噌のそば汁で食べる高遠の「高遠そば」
- 乳酸醗酵の漬物「すんき漬け」と一緒に食べる木曽の「すんきそば」
- 珍しい品種「苦そば」を使った長和町の「だったんそば(韃靼蕎麦)」
また、地域やお店ごとにつなぎや水の割合が異なるため、同じ作り方でも味や食感がそれぞれ異なります。
お店の数だけ味があると言っても過言ではないでしょう。
長野県長野市戸隠地方の「戸隠そば」は日本三大蕎麦の一つ
長野市戸隠地方の「戸隠そば」は、島根県の出雲そば、岩手県のわんこそばと並ぶ「日本三大そば」の一つです。
そば処長野県の中でも特に有名なこの戸隠そばを目当てに、県外から旅行に来る方も多いはず。
戸隠そばの主な特徴は、以下の通りです。
- そばの殻だけ取り除いて挽く「挽きぐるみ」のそば粉を使用
- 伸ばす際は、四角く伸ばさず「丸延し」にする
- そばを少量の束にして5つ並べる「ぼっち盛り」
- 薬味は「辛味大根」を使用
- 「地元野菜のてんぷらや漬物」を添える
挽きぐるみとは、蕎麦の甘皮ごと挽いたそばのことです。
挽きぐるみのそばは、通常の蕎麦よりも色が黒く栄養が豊富で、そば本来の香りと風味もより強く感じられます。
5束のぼっち盛りにする理由は、戸隠五社に由来しているそうです。お店によっては戸隠五社と地蔵堂を含めた、6束のぼっち盛りにしている所もあります。
細かい点はお店によって多少異なるので、ざっくりと「挽きぐるみで色の黒い、束になったぼっち盛りのそばが戸隠そば」と考えていいと思います。
あんまり雑な説明をすると、あとから関係者から怒られそうなのであくまでもざっくりとです。
一般的な白くて綺麗な色をしたそばに慣れていると、全体的に色が黒く、ぽつぽつと黒点のある戸隠そばにびっくりするかもしれません。
ですが一口食べると、口や鼻に抜けるそば本来の香りや風味、味にもう一度びっくりすると思います。
普段食べているそばに比べ、野性的と言うか「力強さ」がまったく違います。
筆者は決して舌が肥えているほうではありませんが、それでも初めて戸隠そばを食べたとき、あまりのおいしさに言葉を失ってしまいました。
挽きぐるみの補足
信州そばや戸隠そばをよりおいしく、たのしく味わうために戸隠そばの一番の特徴である挽ぐるみについて補足します。
そばは、「そばの実」をすり潰して製粉した「そば粉」を使って作りますが、そば粉にする際「どこまで粉にして使うか」で味や風味、栄養価が異なります。
そば粉の種類 | 特徴 |
一番粉 | 一番最初に採れるそばの実の中心部分の粉。 でんぷんが多く、白く甘い味と風味が特徴。 更科そばはこの一番粉だけで作る |
二番粉 | 胚や胚乳部分(内層粉・外層粉)も含まれた粉。 そばを作る際にもっともメジャーな粉で、ここに一番粉や三番粉を混ぜて調整する |
三番粉 | そばの種皮や外層部分が多く含まれた粉。 色は黒っぽく、繊維質が多く味は荒っぽい。 たんぱく質やルチンも豊富で栄養価が高い。 |
四番粉 | そばの甘皮や子葉、そば殻が多く含まれた粉。 栄養はあるものの固くて食感が悪いため、そばを作ったりするのには適さない。 |
通常は味と風味、そして打ちやすさのバランスが取れた二番粉をメインに一番粉と三番粉をブレンドしてお店独自のそばを作ります。
ですが、荒っぽい味ながらも栄養価が高く風味が強い三番粉まで全部使った「挽きぐるみ」の粉で打つのが戸隠そばです。
ただし、上記の情報はお店やそばの専門家によっても言ってることがけっこうバラバラです。
例えば、挽きぐるみについても「三番粉全部使う」「三番粉を一部使用する」「四番粉まで使ったのが挽きぐるみ」などなど。
正解が全く分からないので詳しい方がいたら教えてください。
なぜ信州のそばはおいしいのか?
長野県のそばがおいしい理由は、主に2つです。
- 昼夜の寒暖差が大きく良質なそばが採れる
- 水が綺麗でおいしい
昼夜の寒暖差が大きく良質なそばが採れる
そばは、実が黒くなり始める成熟期に昼夜の寒暖差が10度前後ある場所で栽培されると甘みや香りの強いそばになります。
そばには元々でんぷんが多く含まれていますが、寒暖差のある地域ではそばが自身のでんぷんを熟成させて糖に変え、凍らないようにしているためだそうです。
長野県は、そばの旬である秋頃に昼夜の寒暖差が10度前後になる場所が多く、そのため広い地域で良質なそばが採れます。
また、そばの栽培に適した水はけがの良い土地が多いのも、信州がそばの名産地になった理由の一つです。
水が綺麗でおいしい
おいしいそばを作るためには、茹でたり締めたりする水も重要です。
長野県は、県内の至る所に冷たくおいしい湧水が湧く名水の地としても知られています。
秋~冬季の冷たい信州の水で作られたそばは、そば本来の風味が引き立ち、のど越しが際立つそうです。
そばの栽培に適した土地と気候、そして水が作り出す信州そば。おいしくないはずがない。
長野県のおいしいそばは、いつどこで食べられる?
そばの旬は品種によっても違いますが、一般的に9月~11月に採れたそばを「新そば」と言います。
信州でおいしいそばを食べるなら、やはり秋がおすすめ。
長野県のそば処では、秋になると店頭に「新そば入荷」と書かれます。
長野県有数のそば処、戸隠が賑わうのももちろんこの時期です。
特に新そば&紅葉シーズンの休日や連休になると、戸隠神社周辺には人があふれ、そばのお店には行列ができます。
例えば、戸隠の有名なそば屋さんでは、秋の新そばシーズンはこんな感じで常に行列ができています。
平日でこの状態です。
なので、休日や連休に戸隠へそばを食べに来る際は、千葉にある某テーマパークの人気アトラクションの行列に並ぶくらいの覚悟をしてから来てください。
戸隠まで行かなくても、長野市周辺においしいおそばが食べられる名店はたくさんあるので、ぜひ探してみてください。
自宅で簡単にできる信州そばの作り方
楽天市場などでは、信州そばや戸隠そばを売っています。
価格:1470円 |
信州そば戸隠そばを買えば、現地に行かなくても自宅でも手軽にそばが楽しめます。
好きなつゆを作ったり買ってきたりして食べても良いですし、一緒にてんぷらを揚げて天ざるにするのも良いですね。
そば打ちを趣味にしたり、開業を目指したりしている方は粉から打ってみるのもいいかもしれません。
ただしその場合は独学ではなく、そば打ち体験ができる施設でしっかり教わってください。
長野にはそば打ち体験ができる施設がたくさんありますが、有名なのが戸隠にある「戸隠そば博物館とんくるりん」のそば打ち体験です。
冬季は閉館していますが、それ以外の季節では随時体験予約を受け付けているので、興味のある方はぜひどうぞ。
おすすめの信州そば・戸隠そばのお店を紹介
最後に、筆者が実際に食べた信州そば・戸隠そばのお店を紹介します。
長野市「信州雪蔵熟成そば 音菜」
長野駅の近くにある信州そばのお店「音菜」は、さまざまなそばつゆでそばを楽しめるお店です。
通常のそばつゆ以外に、鴨南蛮・おろし大根・すだちといったやや珍しいつゆや、胡麻担々やカレーといったかなり個性的なつゆも揃っています。
食べきれないほどの種類のつゆがあるので、そばの大盛やおかわりを頼んでも飽きずに食べられるはず。
そばは信濃町産のそば粉を使い、「石臼挽き」「寒ざらし」「粗挽き」の3種をブレンドしています。
長野駅周辺でおいしいそばを食べたいときにおすすめです。
音菜はそばのおいしさはもちろん、つゆ選びも楽しいおそば屋さんです。
住所 | 〒380-0824 長野県長野市南長野南石堂町1422-1 |
電話番号 | 予約専用:050-5263-0639 その他:026-217-2888 |
営業時間 | 11:00~14:30/17:00~20:30 日曜日:11:00~15:00 |
定休日 | 水曜日 |
駐車場 | 無し(付近の有料を利用) |
長野市戸隠 「そば博物館 とんくるりん」
先ほどそば打ち体験で紹介した「そば博物館 とんくるりん」ですが、体験だけではなくお店で戸隠そばを食べることもできます。
写真は、ざる蕎麦・季節の野菜天婦羅三品・そばがき・そば団子など、あらゆるそば料理を楽しめる蕎麦フルコース「とんくるりん博物館そば御膳」です。
手軽に戸隠そばを楽しむならとんくるりんがおすすめ。
正直、戸隠そばとしての個性はマイルドですが、そのぶん癖が無くどんな人でも食べやすいそばです。
住所 | 〒381-4101 長野県長野市戸隠3018 |
電話番号 | 026-254-3773 |
営業時間 | 10:00〜16:00 ラストオーダー:15:00 |
定休日 | 毎週水曜(6月と9月は火・水) 冬季は休館 |
駐車場 | あり |
長野市戸隠 「二葉屋 葉隠」
戸隠神社中社の近くにあるそばの名店「二葉屋 葉隠」では、力強く風味抜群の「これぞ戸隠そば!」というそばが楽しめます。
地元で採れた野菜を使ったてんぷらもおいしいので、ぜひセットで。
葉隠さんの近くには、毎回ガイドブックで紹介される超有名店もありますが、そばの味でお店を選ぶなら断然葉隠さんががおすすめです。
僕が持っていたそばの概念を変えたお店です。本当においしい戸隠そばが食べたいならここで間違いありません。
住所 | 〒381-4101 長野県長野市戸隠3517-6 |
電話番号 | 026-254-2176 |
営業時間 | 月・木・金11:00~15:00 土日祝日:10:30~15:30 |
定休日 | 月・火 |
駐車場 | なし(付近の駐車場を利用) |
長野県の郷土料理 信州そばまとめ
今回は、長野県の郷土料理「信州そば」について解説しました。
普段はカップ麺のそばや立ち食いソバをよく食べるという方も多いと思いますが、たまにはお店で本格的なそばも味わってみてはいかがでしょうか。
普段食べているそばとはまた違った味に、必ず新しい発見や驚きがあると思います。
このサイトでは、信州そばのほかにも長野県の観光情報や郷土料理の情報を多数掲載しています。興味のある方や時間のある方は、以下の記事もぜひ読んでみてください。